相続放棄のQ&A
[最終更新日]:2017/12/06
Q1)亡くなった夫に借金があり、相続をしたくない場合はどうすればよいですか?
A1)相続民法では、プラスの財産よりマイナスの財産(借金)が多い場合について、その支払義務を免れる方法として、「相続放棄」「限定承認」の2つを定めています。
相続放棄は、最初から相続人ではなかったとみなされますので、当然債務を弁済する義務から解放されます。限定承認は、相続した財産の範囲でのみ債務を弁済し、仮に財産が残った場合にのみ、その財産を相続するという制度です。
相続放棄も限定承認も自分が相続人であることを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てなければなりません。また、限定承認を申し立てる場合には、相続人全員でする必要があります。
Q2)被相続人の生存中に相続放棄をすることができますか?
A2)相続放棄は、被相続人の死亡後でなければ、手続をすることができません。
Q3)被相続人が死亡してから3ヶ月以上経過してしまったのですが、相続放棄はできますか?
A3)相続放棄は、「被相続人の死亡後、自分が相続人になったことを知った時から」3ヶ月以内にしなければなりません。その条件を満たしていれば、3ヶ月以上経過しても、相続放棄可能です。
ただし、例外的に「相当の理由」がある場合には、3ヶ月を過ぎていても相続放棄できる場合があります。
裁判所に認めてもらうための申述書を作成することがポイントになりますので、3ヶ月を超えてしまったという方も、当事務所にお気軽にご相談ください。
Q4)被相続人の不動産を売却してしまったのですが、相続放棄できますか?
A4)相続財産を相続人が処分してしまった場合、相続放棄ができなくなります。不動産は重要な相続財産ですので、原則、相続放棄は認められません。
Q5)被相続人の預貯金を葬式代に使用してしまったのですが、相続放棄できますか?
A5)原則として、相続財産に使う行為は単純承認したものとみなされ、相続放棄をすることができなくなります。
ただし、葬儀費用を相続財産から支払った場合、身分相応の当然営まれるべき程度の葬儀費用であれば、単純承認には当たらないとされています。
すなわち、身分相応の葬儀である限り、葬儀費用を預貯金などの相続財産から支払っても相続放棄ができるということです。
しかし、葬儀が身分相応といえる必要最小限の部分だけですので、その点は注意をして下さい。
裁判所・債権者からの説明が求められたときにきちんと答えられるように、相続財産から葬儀費用に充当したことを示すため明細書・領収書などはきちんと保管しておくようにしましょう。
Q6)被相続人の使用していた日用品を処分してしまったのですが、相続放棄できますか?
A6)日用品などの一般的に資産価値がない相続財産に関しては、処分してしまっても相続放棄の障害にはなりません。
しかし、日用品の定義も人によって異なりますので、その点は注意をしてください。
Q7)相続放棄した場合、被相続人の預貯金はどうなりますか?
A7)相続放棄をすると相続人ではありませんので、被相続人の預貯金を絶対に引き出したりしてはいけません。もし引き出してしまった場合には、単純承認とみなされる場合がありますので注意が必要です。
相続放棄の結果として、誰も相続する人がいなくなった場合、利害関係人等の請求により相続財産管理人が選任され、債権者に分配された後、特別縁故者がいない場合は最終的に国庫に帰属するか、5年或いは10年経過により預金債権が時効となり消滅することになります。
Q8)相続放棄した場合、被相続人の不動産はどうなりますか?
A8)相続放棄の結果として誰も相続する人がいなくなった場合、利害関係人等の請求により相続財産管理人が選任され、債権者に分配された後、特別縁故者も共有者もいない場合には、最終的に国のものになります。
Q9)相続放棄の手続き中に、金融機関から支払の請求された場合はどうすればいいですか?又、相続放棄の手続き後に、相続放棄が完了したことを、金融機関に知らせる必要はありますか?
A9)「相続放棄の手続き中です」と伝えましょう伝えましょう。
すでに相続放棄は完了している場合には、相続放棄の申述受理証明書を渡しましょう。
また、「1,000円でもいいからとりあえず払ってください
と言われて支払ってしまうと単純承認したものとみなされて、相続放棄が認められなくなることもありますのでご注意ください。
Q10)相続放棄の手続き中に、他の相続人から遺産分割の書類に署名押印をするように言われた場合はどうすればいいですか?
A10)相続放棄の手続き中なので協力できないことを伝えましょう。遺産分割協議に参加することは「相続財産の処分行為」にあたりますので、応じてしまうと相続放棄が認められなくなる可能性がありますので、ご注意ください。
Q11)相続放棄が取り消される場合はありますか?
A11)相続放棄が無効であるとして、債権者等の利害関係人から提訴され、訴訟手続きの結果、相続放棄の効力を失う可能性はあります。
Q12)相続放棄を撤回することはできますか?
A12)相続放棄の手続きが完了した後で、相続放棄を撤回することはできません。しかし、
騙されて相続放棄をした場合や脅されて相続放棄をした場合等の一定の事由がある場合、
相続放棄を取り消すことができます。
Q13)夫が多額の借金を抱えて亡くなりました。相続放棄をしたいと思っています。しかし受取人が妻である私になっている生命保険金はもらいたいと思っています。相続放棄をすると、生命保険金は受け取れなくなるのでしょうか。また、生命保険金を受け取ってしまうと、相続放棄ができなくなるのでしょうか。教えてください。
A13)受取人が被相続人以外であるならば、生命保険金を受け取っても、相続放棄には影響がありません。
相続放棄後に生命保険金を受け取ることもできます。
これは、受取人が、亡くなった方以外の者に指定されている場合、保険金は遺産ではなく、指定された者の固有の権利として認められてるからです。したがって、相続放棄があっても生命保険金は受け取れます。
また、生命保険金を受領した後でも相続財産を処分したことにはならず、相続放棄は可能です。
但し、生命保険金の受取人が亡くなった方となっている場合、生命保険金は相続財産となり、これを受け取ると相続放棄ができなくなりますので、ご注意ください(相続放棄をすると受け取れません。)。
Q14)相続財産全体がプラスだかマイナスだかわかりません。価値のわからない宝石もありますが、近くに鑑定してもらえるところがないので時間がかかりそうです。こんな状況では3ヶ月ではとても終わりそうにありません。こうした場合はどうしたらいいのでしょうか?
A14)相続放棄や限定承認する場合には、相続人は,相続の開始があったことを知った時から3か月以内に手続きをしなければいけません。ただし,この熟慮期間内に相続人が相続財産の状況を調査しても、なお、単純承認、限定承認又は相続放棄のいずれをするかを決定できない場合には、申立てにより,この3か月の熟慮期間を伸長することができます。